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大腸がんは早期発見・早期治療が大切です。大腸がんの原因、症状、検査、治療を知っておきましょう!



直腸がんの切除術と温存術


早期の直腸がんの切除術

 直腸癌の手術が難しいといっても、早期がんであれば結腸癌と同様に内視鏡による切除術を行う事ができます。しかし、直腸癌といっても肛門に近い側の癌であれば内視鏡を使用する事ができないので、代わりに「経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)」という手術法を用います。

TEMによる切除術
 TEMとは直腸鏡や手術器具が装着された金属製の筒を肛門から入れるもので、直腸鏡で直接直腸内の観察しながら手術を行います。ガンの切除は切除部分の粘膜下に生理食塩水を注入して盛り上がらせ、針状の電気メスで切除します。この手術法は短時間で終わるほか、臓器・機能を極力温存できるので患者負担が少なく、術後の翌日には水分を摂る事ができ、2日目には粥状の食事を摂る事ができます。このTEMは肛門から5〜20cmの早期がんに行う事ができます。


進行した直腸がんの切除術

 直腸の進行がんの手術となると、切除範囲によっては人工肛門になるリスクがあります。一昔前の直腸癌の手術では、直腸すべてを切除し人工肛門を造設する治療法が中心で行われていたので、6〜7割の患者さんが人工肛門になっていました。しかし、最近の治療法では極力肛門を残して排便機能を温存する手術法が行われるようになり、癌の発生部位によって機能を温存するためのさまざまな治療法が開発されてきました。

前方切除術

 直腸上部の直腸S状部にガンが発生した場合は、ガンの下側は3cm、ガンの上側は10cm以上切除する「前方切除術」が行われます。これは、直腸を流れるリンパ液が上に向かって流れているため、ガン発生部位の上部に比べて下部は少ない切除で済むという考えに基づくものです。この術式では直腸をかなり残す事ができるので、排便機能を極力温存する事ができます。


低位前方切除術

 上部直腸まはた下部直腸にガンが発生した場合は、前方切除術よりも肛門に近い側で切除する低位前方切除術が行われます。直腸切除後の吻合(切った腸の端同士をつなぐこと)が骨盤内の位置で行わなければならず、手縫いでの吻合が難しいことから、以前は多くの場合で人工肛門となっていました。しかし、自動吻合器ができてからは手の届きにくい場所でも吻合が可能となったため、肛門を残す事が可能となりました。ただ、肛門が残っても直腸の多くが切除されてしまうため便を貯留することが困難となるため、術後に排便障害が起こることがあります。


超低位前方切除術と直腸切除術

 以前は肛門に近いガンの場合は直腸と肛門を切除し、人工肛門の造設が行われていましたが、現在では肛門から2〜4cmしか離れていないガンでも肛門を残すようにする超低位前方切除術が行えるようになりました。しかし、ガンが肛門括約筋にまで浸潤している場合は肛門括約筋と直腸をすべて切除する直腸切除術が行われ、人工肛門を造設せざるをえません。

 患者さんの誰しもが人工肛門になる事を避けたいと思いますが、肛門の近くでガンが発生している場合、肛門を残す事によってガンを取り残すというリスクが発生し、後日再発の危険性が高まることがあります。また、肛門を残せたとしても直腸のほとんどが切除された場合は、便を貯留することができなくなるので便失禁や頻便などの排便機能障害を起こす事があります。特に高齢者の場合は肛門括約筋の機能が低下していることが多く、無理に肛門を温存する事で生活しづらくなることもあります。


人工肛門の造設

 人工肛門はストーマとも呼ばれ、肛門の機能が失われた場合などに肛門の代わりとして取り付けられます。人工肛門は一時的に取り付ける場合と永久的に取り付ける場合があり、前者は大腸がんなどによって腸閉塞や術後の縫合不全が起こった場合に一時的に人工肛門を取り付け、症状の改善後に人工肛門を取り除き、腸を吻合します。

 後者は大腸がんの切除手術で肛門括約筋まで切除し、肛門機能が損なわれた場合に取り付けるものです。肛門括約筋が失われた状態では肛門を収縮する事ができず、便が垂れ流しの状態になるからです。人工肛門は元々の肛門位置に取り付ける訳ではなく、腹部に数cmの穴を開け、そこに結腸をつなげて造ります。人工肛門を造設した場合は、洗浄などの日常のケアが必要になります。