大腸がんの発生部位には偏りがある
大腸と一言で言っても、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸と多くの部位に分けられますが、癌の発生には偏りがあり、肛門から近いS状結腸と直腸に大腸がん発生の70%が集中しています。癌の発生が偏る1つの原因として便の滞留時間の影響が考えられており、便の滞留時間が長いほど、それだけ発がん性物質にさらされる時間も増えることになります。肛門に近いS状結腸と直腸は排便に備えて便を蓄えておく場所であるため、滞留時間も長くなり、それが癌の発生リスクにつながっていると考えられています。
ガン発生部位の詳細な内訳は、直腸が39%、S状結腸が28%、上行結腸が13%、横行結腸が8%、盲腸が6%、下行結腸が5%となっています。
大腸がんの症状は発生部位によって異なる
大腸がんの代表的な症状として「出血」「便通異常」「腸閉塞」がありますが、大腸がんは発生する部位によって現れる症状は少しずつ異なります。上行結腸や横行結腸では便がまだ液状であるため、ここで出血が起こっていたとしても便からは判断がつきません。また、液状であるために便の通過障害が起こることもありません。ただ、便からは出血の有無の判断が難しくても、出血は続いているために貧血症状が現れることがあります。生理のない男性で貧血症状が現れた場合は、消化器系からの出血を疑って診察を受けるとよいでしょう。
また、下行結腸やS状結腸で出血すると粘血便が見られるようになるほか、下痢と便秘を繰り返したり、便が細くなる便通異常が起こったりします。肛門に最も近い直腸で出血が起こる場合は、便に血が混じるというよりは、直接肛門から出血するようになります。そのため、よく痔の出血と間違えられやすいのですが、大腸がんの出血と痔による出血では違いがありますので注意が必要です。
大腸は便をつくる働きをしているため、大腸がなんらかの病気になると便通異常が起こるようになります。代表的な便通異常として「便秘」と「下痢」があげられますが、これらは日常的に起こりやすいものであるため甘く見られがちです。しかし、便秘や下痢などの便通異常は大腸の病気の重要なサインとなります。ただの便秘や下痢だと軽く考えず、長引くようであれば専門医を受診するようにしましょう。
便秘
便秘を定義する事は便通に個人差があるために難しく、数日間排便がなく便が硬くなったり、お腹が張ったりすれば便秘と呼べますが、数日間排便がなくても通常の便が出れば便秘とは言いません。便秘は腸の働きが低下して起こるものと、腸の構造に問題があって便が通りにくくなるために起こるものに分けられます。
前者の便秘が一般的に多く、食物繊維が不足した食生活やストレスの多い生活、便意があってもトイレに行けず我慢する生活などによって起こります。また、内分泌疾患や薬剤性障害などによっても起こります。後者は腸管内の癒着や炎症、腫瘍などによって腸管内が狭くなり、腸内の内容物が通りにくくなるために起こります。
下痢
通常、便に含まれる水分は70%前後ですが、80%を超えると泥状の便となり、90%を超えると水のような便となります。このような状態を下痢といいます。腸管内に入る水分のほとんどは小腸で吸収され、残った水分は大腸で吸収されます。
しかし、腸の蠕動運動が異常で水分吸収が十分に行えなかったり、消化液が過剰に分泌されると、便に含まれる水分量が過剰となって下痢を起こします。
本来腸から吸収される水分が便として体外に出て行くわけですから、このような状態が長く続くと体が脱水症状を起こしたり、栄養吸収が十分に行えないために栄養失調になることもあります。下痢が続く場合は、十分な水分摂取が何よりも大切です。
また、下痢便に血液が混じっている場合は消化管内での出血が疑われ、何らかの重い病気のサインである事もあります。急性の下痢で血液が混じっている場合に疑われる病気としては、大腸がん、大腸ポリープ、大腸炎、胃・十二指腸潰瘍などが考えられます。また、慢性の下痢で血液が含まれる場合には大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病などが考えられます。いずれにしても、早めに専門医を受診する事をお勧めします。
血便(下血)
血便とは目で見て便に血液が混じっている状態をさし、下血とも言います。消化管内で出血していると血便が起こりますが、出血する場所によって便の色が異なり、上部消化管(食道、胃、十二指腸)で出血している場合は黒色便またはタール便となり、下部消化管(特に大腸など)で出血している場合は赤褐色または鮮紅色となります。上部消化管の出血で便が黒くなるのは、胃酸や消化酵素によって血液が黒く変色するためです。
いずれにしても消化管内から出血しているということは、なんらかの病気のサインとなります。肛門からの出血は痔によるものと考えられがちですが、安易に考えず、専門医での精密検査を受けるようにしましょう。また、日々排便後に便の色や状態を観察する事も大切ですが、肉眼には限界がありますので、集団検診等で毎年便潜血検査を受けるようにしましょう。
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