近年、日本人に大腸の病気が増えています。大腸がんの死亡率は年々増加し、将来的にがんの死亡原因のトップとなると予想されています。また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患も増加しています。なぜ、日本人に大腸の病気が増えたのでしょうか。
その原因として、日本人の食生活の急激な変化があげられます。かつて日本人は肉を食べる習慣があまりなく、穀物や野菜を中心とした食物繊維の多い食生活を送ってきました。しかし、第二次大戦以後に日本人の食生活は高タンパク、高脂質の欧米型へと急激に変化していきました。
厚生労働省の「国民栄養調査」によると、1人1日あたりの肉類の摂取量は、1955年で12.0gでしたが、2003年には76.9gと大幅に増えており、乳製品も14.2gから126.4gと著しく増加しています。その一方で食物繊維の摂取量は22gから14gへと減っています。食物繊維は腸の健康維持に大切な役割を果たしているため、食物繊維の摂取不足は腸の病気の増加につながっています。
また、ストレスによる胃腸障害も増えています。腸の働きには精神的ストレスが大きな影響を与えており、強いストレス状態が続くと、腸の働きをコントロールしている自律神経の働きが乱れ、下痢や便秘症状を引き起こす事があります。このような状態が続くと、症状が慢性化していきます。
日本人の部位別がんの罹患率を見てみると、1990年までは長らく男女ともに胃がんがトップでした。これは日本人の食生活が欧米型になる前に、塩分の多い食生活を送ってきたことによるものです。しかしながら、近年はますます食生活の欧米化が進んだことにより、大腸がんの死亡率が年々増加の一途をたどっています。
2003年には女性のがんによる死亡原因で、胃がんの抜いて大腸がんがトップとなりました。一方、男性のがんによる死亡原因の1位は肺がんであり、近年急速に伸び続け、1993年には胃がんを抜いてトップとなりました。大腸がんの死亡率は2007年には肝臓がんを抜いて第3位となっています。
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